HOME > 体外衝撃波

当院では体外衝撃波治療を採用しており「集束型」「拡散型」を患者様の状態に合わせて機器を選択し、治療を行っています。

体外衝撃波治療

衝撃波とは
 いわゆる「圧力の波」のことで音波の一種です。気体や液体、個体の中を、音速を超えて伝わる圧力の波を「衝撃波」と呼び、もともと医療では、腎臓結石などに対して体外からこの衝撃波を与え、外科手術をおこなわずに石を砕く「体外衝撃波治療」に利用されてきました。その後、骨折や偽関節等の治癒促進、難治性腱症や腱付着部症など軟部組織の疼痛治療といった整形外科領域でも注目され、応用されるようになりました。

体外衝撃波治療の特徴
体外衝撃波の効果は大きく2つあります。
@即時除痛効果:痛みの原因となる自由神経終末を破壊・減少させ、その場で痛みを和らげます。
A組織修復効果:幹部の血流改善効果および血管新生を促進する成長因子の産生が起こり、組織修復が促進されます。

衝撃波治療器について
整形外科領域で使用される体外衝撃波治療器には集束型拡散型の2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。2つの機器の違いについて説明していきましょう。

集束型の特徴
集束型体外衝撃波治療器は、広いデバイス先端面から発生させた衝撃波を中央に集めることで、より大きな衝撃波として患部に照射可能な治療器です。当院が導入している『DUOLITHRSD1T-TOP ultra(デュオリス SD1 ウルトラ)』は、STORZ MEDICAL社独自開発の円筒型衝撃波コイルにより、安定した衝撃波エネルギーを発生させるとともに、2種類のスタンドオフを付け替えることによって、衝撃波エネルギーの到達深度を調整できるため、より安全に、また効果的に治療を行うことが可能となっています。また拡散型と比較して10倍以上のエネルギー出力があり、その分だけ高い治療効果が期待できます。
集束型の場合、限局した病変、例えば肘腱付着部炎や骨障害の治療において、患部のみにピンポイントで強力な衝撃波を加えることで高い効果が期待できるのです。
また出力の上げ方も患者様の痛みの感じ方に応じて徐々に上げていくため、痛みに弱い方や小児の患者様へも使用しやすい特徴があります。
そして集束型の最大の特徴が骨組織への治療効果です。
集束型はその高いエネルギー出力で骨細胞を刺激し、骨折部の骨癒合を促進する効果があります。
そのためスポーツによる疲労骨折や偽関節(骨がつかない)、早期の離断性骨軟骨炎(野球肘)などに良い適応があります。また加齢からかなる変形性関節症(膝・股関節・足首・肩など)の際に生じるB M L病変(骨髄浮腫)に対しても一定の効果が期待できます。 骨折がなかなか治らない/早く治したい、手術を勧められたけど今すぐできない/したくないといった場合に、集束型体外衝撃波治療器が有効です。

拡散型の特徴
拡散型衝撃波は、連続したピストン運動によって発生させた衝撃波を利用します。デバイス先端面は500円玉程度の狭い面積です。出力はデバイス先端が最も高いのですが、距離が深くなるほどにその出力は拡散しながら減弱していきます。そのため患部が浅いもしくは広範囲の場合に適しています。一度に広範囲を対象とする「拡散型」は、患部周囲の筋肉や脂肪全体を振動させる効果も認められるため、慢性腰痛など、MPS(筋・筋膜疼痛症候群)やタイトネス(筋肉の柔軟性不良)の改善、筋膜リリース効果、関節拘縮などに有効です。

体外衝撃波治療の効果を高めるポイントは『照射中の痛み』です
体外衝撃波治療は痛みのある患部にあえて衝撃波を照射するため、治療中は痛みを伴います。患部に衝撃波が照射されると必ず痛みを生じますが、正常な組織に同程度の衝撃波を照射しても弱い痛みしか感じません。衝撃波治療では患部に正確に衝撃波が照射されている必要があり、治療効果を高めるためには『照射中の痛み』を感じる事が重要です。治療者は患者様からの痛みの具合を聞き取りながら照射部位を微調整します。これを『バイオフィードバック』と呼びます。 バイオフィードバックを受けながら一定数照射を続けていると、痛みの原因である自由神経終末が破壊され次第に痛みが和らいできます。衝撃波は出力が高いほど治療効果が高くなるため、照射の痛みが緩和してきたら徐々に出力を上げ、患者様が耐えられる痛みの上限まで出力を上げていきます。この様に治療中は治療者と患者様とのコミュニケーションが治療のポイントとなります。

当院の体外衝撃波治療の特徴
集束型と拡散型の2種類の体外衝撃波治療が受けられます。
当院では集束型と拡散型、両方の体外衝撃波疼痛装置を導入しており、付着部炎の発痛点に対して集束型を使用して除痛を図り、周辺の筋肉に対しては拡散型を使用して症状の改善を図ることが可能です。 また集束型は主に自費診療(一部保険適応)、拡散型はリハビリテーション(保険診療)の中で行います。 ステロイド注射で効果がない方、長引く痛みに悩まれている方はお気軽にご相談ください。

  集束型 拡散型
治療範囲 狭い 広い
到達深度 浅い〜深い 浅い
出力 高い 低い
適応組織 骨、腱、靭帯 筋肉、腱、靭帯
治療間隔 1〜4週間 1日〜1週間
治療回数 1〜4回ほど 1〜12回ほど

体外衝撃波とステロイド注射の違い
ステロイドの主な作用は、強力な抗炎症作用です。整形外科では、手足の痛みを引き起こす腱炎や腱鞘炎、関節炎などの炎症疾患に対して、ステロイド注射を行うことがあります。ステロイド注射は注射直後から痛みが緩和される有効な治療法である一方、組織修復が進まないまま頻回に行なわれると、次第に腱や軟骨を傷めてしまう側面があります。また糖尿病や免疫力の低下した方では、まれに細菌感染を引き起こすことがあり注意が必要です。そのためステロイド注射を行う際は、必要に応じてなるべく少ない回数で行い、その効果が一時的であれば他の治療法を選択していきます。
体外衝撃波もステロイド注射もその場で痛みを和らげる点で同じですが、最も大きな違いは体外衝撃波が持つ組織修復力です。ステロイド注射は使うほどに徐々に組織を傷めていきますが、体外衝撃波は組織の血流増加と成長因子の誘導により、組織修復を促進します。これはステロイドと真逆の効果であり、効果持続期間も体外衝撃波が長くなります。また体外衝撃波はドーピングチェックがある方も使用することが可能なため、安心してスポーツに取り組めます。またシーズン中でも治療可能であり、治療とコンディショニングの両面からメリットがあリます。 当院では体外衝撃波の導入以降、ステロイド注射を行う回数が大きく減りました。体外衝撃波治療はステロイド注射を減らすことができる有効な治療法だと言えます。

体外衝撃波治療の適応疾患

上記以外の照射について
小児への照射
従来、オスグット病やシーバー病、内側型野球肘などの小児骨端線への体外衝撃波照射は、骨端線早期閉鎖の危険性から推奨されていませんでした。しかし近年では低出力であれば骨端線への照射も可能であることが確認されています。さらにサッカーや野球などで多く見られる腰椎分離症(成長期の疲労骨折)に対しても、その適応が広がっています。腰椎分離症は、年齢にもよりますが発症すると体幹装具を着用した状態で3?6ヶ月の運動制限やリハビリが必要となります。しかし体外衝撃波治療で疲労骨折部の骨細胞を刺激することで、骨癒合を早め、従来の治療期間よりもスポーツに早く復帰できる可能性があります。

変形性関節症への照射
変形性膝関節症は、膝や股関節などの関節軟骨の摩耗によって関節炎と変形が生じる疾患です。 主な治療はヒアルロン酸注射やリハビリテーション、手術がありますが、軟骨を下支えする軟骨下骨の損傷に対して、集束型衝撃波が有効な場合があります。ヒアルロン酸注射が効かない、今すぐ手術ができない/手術は受けたくないといった方が対象です。

末梢神経への照射
手の痺れや痛みの原因となる手根管症候群や肘部管症候群などの絞扼性末梢神経障害に対しても体外衝撃波の効果が確認されています。当院では治療に際して拡散型体外衝撃波を使用しています。

腱鞘炎への照射
手指が痛く、曲げ伸ばしで指が引っかかるばね指や、足関節後方の痛みの原因となる腓骨筋腱炎などに対しても一定の効果があり、ステロイド注射を回避することが可能です。この他にも適応となる疾患は多数存在します。

副作用やリスク・有効率について
下記のような副作用が現れる場合があります。いずれも数時間?数日で軽快していきます。
血液が止まりづらい薬を内服中の方はご相談ください。
・照射部位の赤み、腫れ、点状出血、痛み

集束型体外衝撃波の治療の流れ
診察及びレントゲンやエコー、MRIなどの画像検査を行い適応疾患であると判断した場合、相談の上、集束型体外衝撃波治療を予定します。治療スケジュールは対象疾患や年齢によって異なります。
 通院1回目:診察と検査、治療予約
 通院2回目:照射1回目
 通院3回目:照射2回目
 ・
 ・

治療当日の流れ
1.痛みのある点(患部)を触診や超音波エコーによって特定し、衝撃波の照射部位を決めます。
2.治療台にて、座位や臥位など、患部に照射しやすい体勢になっていただきます。
3.まずは弱い出力の照射から始め、反応をみながら少しずつに出力を上げていきます。
  痛みを感じていれば、治療部位に衝撃波が照射されています。
4.目的とする衝撃波のショット数に達したら終了します(通常は2,500発)。
5.1回の治療時間は約10分です。

治療頻度
・靭帯、腱などの軟部組織への治療:1〜2週間に1回
・骨に関わる治療:3〜4週に1回
・実施合計回数の目安:3〜4回

費用について
 ○保険診療(難治性足底筋膜炎のみ)
 足底筋膜炎でかつ、内服薬・湿布・インソールなどによる保存治療を6ヶ月以上行っても痛みが改善しない場合のみ、保険診療の対象になります。
 ・窓口負担金

3割負担の場合
15,000円
2割負担の場合
10,000円
1割負担の場合
5,000円
  ※初診料・再診料・検査料が別途かかります。
  ※前回治療から3ヶ月以上が経過し、痛みが再発した場合は再度医療保険を使用できます。

 ○自費診療(その他の適応疾患 / 拡散型衝撃波で効果不十分な場合)
初回
6,000円
2回目以降
6,000円
  ※治療回数はおよそ3〜4回です。

 ○拡散型衝撃波については保険診療によるリハビリテーションの中で実施いたします。
  徒手療法や運動療法の一部として行います。拡散型衝撃波の1回の照射時間はおよそ2〜5分程度です。